《グンジEND noji Ver.》


逃げなけば。



限界までスピードを上げて走っていた為、アキラの息はすでにあがっていた。ひび割れて傾いたビルの隙間をうように、細い路地を抜けて行く。
トシマに来て日が浅いアキラは、もはや自分がどこをどう走っているのかすら分かってはいない。

焦りと興奮で視界はかすんでいた。
「……っ、ハァ、ハァ……っ…」
崩れかけた建物の角を滑るように左へ曲がり、横道へ入る。
その暗がりの先に人影はない。

悲鳴を上げている肺に酸素を送り込もうと、走る速度を緩めた。

その時。

「…みーっけたぁ〜〜〜♪」

場違いな明るい声が頭上から降り掛かる。

「っ…!」

ビクリとしてアキラが上を仰ぐよりも早く、チカチカと派手な色が目の前に現れた。

「甘ちゃんだよなぁ〜〜お姫様は〜。逃げられると思った?」
言葉を発した口が不気味に吊り上がる。

パサついた金髪に黒のトライバルタトゥー。処刑人の一人、グンジだ。

「くっ…」
アキラがきびすを返すよりも早く、グンジの手がのびる。
「っ!は…」
『放せ』、そう口にする暇もなく、アキラの体はグンジに捕らえられていた。
浅い呼吸が熱く肌にかかるぐらいに顔が近づいて来る。

「イ〜イ匂いだよなぁー」
グンジはそう言うと、アキラの髪を引っ張り、け反った首元の匂いを吸い込んだ。
「ん〜、ハァーーー。やっぱコレってフェロモンの匂いってやつー?」
耳元で舐めるように問う声に、アキラの喉がゴクリと音を立てる。

その音が耳に届いたのか、グンジが喉仏に歯を立てた。
「っ、くっ」
ビクリとアキラの体が跳ねる。
痛いような、ムズ痒いような微妙な刺激に、一気に鳥肌が立った。
グンジはそのまま歯をあてながらあごを伝い上がり、アキラの耳たぶをむ。
「っ、ぅあっ」
ゾワリと背筋に電流が走る。
予想もしなかった自分の声に、アキラはとっさに口元を手で覆った。
「ギャハ!感じちゃったー?」
蔑むようなグンジの言葉に、アキラはギロリと処刑人を睨みあげる。
「…あー…、イイ目するよなぁ。そんな誘っちゃってー」

グンジの前髪が流れて、普段は隠れている瞳が隙間から覗く。
それは欲望と内なる狂気にいろどられ、妖しく濡れていた。
そのゾクゾクするような瞳に魅入みいられていると、乱暴に壁に突き飛ばされた。

「ぐ…、っ」

衝撃で息がつまる。そのままバランスを失い、アキラは地面に倒れ込んだ。
「なー、お姫様の名前なんてーのー?」
屈み込み、グンジはナックルの刃でアキラの俯いた顔を上げさせる。

「………」

「答えなきゃー、このまま頭ぶち抜いちゃうよ?」

グイ、と喉にあてがった刃を食い込ませる。
「っ、……ア、キラ」
かすれた声でアキラが答えた。
「アキラ?ふーん。…なんつーか…こう、アキラってさぁ〜…苦痛に喘ぐ声とか、屈辱に歪む顔とか見たくなるって感じ?」
ドロリとした欲望を含む目に射竦いすめられ、息を呑む。

「ちょっとさぁ、鳴いてみろよ」

「っ!」
グンジは鉤爪で一気にアキラのシャツを引き裂いた。あらわになったアキラの肌に、ゆっくりとグンジの視線が注がれる。
その真意が見えず、アキラの顔に困惑の色がにじんだ。

「白くてキレーな肌だなぁー。…それにぃ」
グンジの口元が好色そうに歪むと、鉤爪でゆっくりとアキラの胸の小さな隆起をなぞった。
「っ、ぁっ、…」
ヒクリ、とアキラの肩が震える。
「かぁーわいーぃ乳首はピンク色〜♪」
「くっ、ふ…ぁ」
スルスルと皮一枚傷付けずに、器用に刃がアキラの突起を往復する。
「ヒャハハッ!勃ってきたぜぇ〜?ボクちん、感じちゃうーっ、てかぁ?!」
その言葉に、一気に血が上る。
「ふざけるなっ!!」
鉤爪の驚異すら構わず、アキラは処刑人に殴りかかった。
「ギャハ!」
グンジは易々と拳を避けると、その腕をひねり、アキラを壁に押し付けた。
「ぐ…ぁっ」
「まーまー、焦んなってぇ。」
アキラを押さえ込みながら、グンジは器用に片方のナックルを外す。
ガシャ、と金属の乾いた音がビルの間に響いた。

「なー、お前さぁー」
グンジがアキラの耳の後ろをねっとりと舐めながら、ナックルを外した手でスルリとアキラの胸を撫でる。
「っ…ふ、…んっ」

「最高の苦痛ってぇ、何か知ってるかぁー?」
クニクニと、紅く色づいた肉芯をもてあそびながら問う。
「っ、…し、らな…っ」
「究極の苦痛は究極の快楽と同じなんだってェー」
突起をなぶっていた指が、ギリリとそれをひねった。
「ひっ、いっ…つ!」
アキラの首か仰け反り、悲鳴が口から漏れる。
「このちっちゃなピンクの乳首もぉ、オレが赤くってでっかいエロエロな乳首に開発してやんぜぇ♪」

グンジはそう言うと、アキラを振り向かせて喉を掴んだ。

「ぐ…っ、はな、せっ」

タトゥーで飾られた硬い腕を、必死に振りほどこうとする。
グンジはしばらくその様子をニヤニヤと見つめると、捻られて赤く火照ほてった紅芯を、慰めるように口に含んだ。
チュク、とわざと音を立てて吸い上げる。
「っあ…、ふ…ァ…ッ」
ゾクゾクと腰から甘やかな悪寒が走りぬけた。アキラは逃れようともがくが、喉を掴んでいる腕はピクリとも動かない。
「やっ…やめ…てっく、れ…っ」
顔を朱に染めて懇願こんがんする。
グンジはチラリとその顔を見ると、もう片方の胸の飾りをカリ、と爪で引っ掻いた。
「っ!んぁっ…ッ」
ビクッと体が揺れ、口からは切ない悲鳴が漏れる。
グンジはその湿った唇をペロリと舐め、そのままアキラの口を自らの唇で塞いだ。
「んっ……ぅ、…」
柔らかいアキラの口腔がグンジの舌で犯されていく。
甘くとろけるような感覚にアキラの腰がジワリと熱を持つ。
その間もグンジの指はアキラの硬くなった胸の突起を弄んでいた。

キス、という予想外の行為をされたからか、アキラの中に屈辱感以外の奇妙な感情がフツリと沸き上がる。
恐怖とはまた違う、ましてや好意なわけでもなく…。

何かが変わってしまうという、焦燥感しょうそうかんのような不思議な感覚だった。

「んっ、ふ…、っ…んぅ」
唇の端から飲み込めなかった唾液が喉を伝う。その感触にもアキラの皮膚がゾワリと粟立あわだった。
気持ちが良すぎて、グルグルと世界が回るような感覚に目眩めまいがする。
キスの経験もほとんど無いにもかかわらず、アキラは本能であるかのように夢中でグンジの舌を追った。
いつの間にか腕がグンジを抱き寄せる様にその背中に回され、もっと、とでも言わんばかりにアキラは身をよじる 。
グンジの唇がそこから離れ、今度は耳に舌を這わせると、クチュクチュと淫靡いんびな水音を響かせ、耳の中まで嬲り始めた。
「ふ、ぁ…っん、やっあっ…」
切なく声をあげるアキラの体を、グンジの手が肌のすべらかさを確かめるかのようにまさぐる。

その行為は思いがけず優しく、アキラは波の間を漂うような不確かな快楽に呑まれながら、ふと思った。

セックスだ。
ただ犯されているんじゃない、これは…セックスなんだ。

そう意識すると、急に切なさが込み上げてくる。
不思議と嫌悪感は無かった。
いや、今はただえ間ない快楽にそう思わされているだけなのかもしれない。

それでも、アキラには何故だかそうではないような…そんな気がした。

ガチャリ、とグンジがもう片方のナックルを落とす。
「なー、オレにもイイ思いさせてくれるー?」
グンジはニヤリとして、アキラのパンツを下着ごと一気に引きずり下ろした。




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