《Act.5 蕩けるような》

凱斗が載っているという雑誌を買い、ついでに酒のさかなも買ってコンビニを出た。酒が入ってから時間が経ったせいか、睡魔が襲ってくる。
「これ」
眠たさに少しぼんやりしたオレに、凱斗はページを開いてオレに差し出した。
「んー?どれ…」
雑誌の中の凱斗に思わず見入ってしまう。
ソコには、馬鹿丸出しでエロトークに参加してるなんて、微塵も感じさせない男がいた。
ライトの陰影に浮き出された体の輪郭はなまめかしく、うつ向き加減の端正な顔は、妖しく光る瞳をたたえていた。
正直なところ、綺麗だな、なんて思ってしまった。
写真を見つめるオレの横で、困った風な顔をして凱斗は言った。
「なんか、嫌なんだよな。」
「へ?」
「だって俺、すげぇキザっぽくねぇ?そーゆースカシた野郎って嫌いなんだよな」
いやいや、お前自身だろ?とフワフワした感覚の中でツッコむ。本気そうに言う凱斗に思わず「でも格好良いと思うけど…」なんてフォローしてしまった。
「そ?響介がそう言うなら、オレも捨てたもんじゃないか」
と言い、凱斗は笑った。
また心臓がビクリと跳ねる。ふやけた脳ミソで、『病気かな』なんて考える。
気付けば、ぼんやりと凱斗の顔を見ていた。さっきまで微笑みを貼り付けていた凱斗の顔が、次第に表情を無くしていく。
「…響介…、誘ってんの?」
声が遠く、聞き取りにくい。ダメだ…本格的に眠たくなってきた。
凱斗の口が動いてるのはわかるけど、声は耳を通り過ぎる。
「え?何て言ったんだ?」そう言おう思ったのに、オレの口から漏れたのは「…ぇ…」と言う掠れた声だけだった。
眠気に体が熱くなり、しゃべるのも億劫おっくうになってきた。近付いて来た凱斗の目が何となく潤んでんな、と思った瞬間、オレの唇に温かく柔らかいものが押し当てられた。
チュ、という小さな音がして、キスをされたんだと気が付いた。
「………」
ジッと、欲望をにじませた瞳で凱斗が見つめてくる。
オレは自分が嫌がりもせず、漠然とキスって気持ち良いな、なんて考えてる自分に少し戸惑った。
…きっと酔ってるせいだな。
自分への言い訳を考えていると、「嫌じゃないの?」と聞かれた。
「…ぃや、だ…」
濡れた吐息が熱く感じるほどの距離で、凱斗がフッと笑った。
「全然、説得力ないんだけど」
そう言うと凱斗はまた唇を重ねてきた。
今度は凱斗の湿った舌が、緩く閉じられたオレの唇を割って、そっと入って来る。熱いな、なんてそんな事を意識しながら、何でタカは駄目で凱斗なら良いんだろう、と疑問に思った。
オレの考えを察するかのように、さっきまで遠慮がちに口腔をまさぐっていた凱斗が、強くオレの舌を吸ってくる。
痺れるような甘い快感に、何も考えられなくなる。

頭の芯がブレていく。
唇から全身がトロトロと溶け出してしまいそうだ…。

脳髄のうずいまで、とろけるような甘いキス。


初めての経験だった。


「ん…んぅ…っ」
さっきまで、ただ全身にゆるく響いていた快感は今、ダイレクトに下半身を直撃している。ズクン、ズクンとオレの欲望に火が点く。
腰が揺れて膝がガクガクし始めると、凱斗がオレを支えるように、より一層強く抱き締めた。いつの間にか凱斗と壁に挟まれるような形になっていて、身動きが出来ずに息苦しい。
「ぅ…、か、いとッ」
何とかキスの合間に声を絞り出す。
「…何?今、忙しい」
オレの呼びかけもむなしく、再び凱斗の唇に襲われる。
「ん…っ」
二人の混じり合った唾液が顎を伝い落ちる。喉を流れる甘い悪寒にゾクリと鳥肌が立った。身体がフワフワと中に浮いている感じがする。
不意に唇が離れ、首筋に濡れた感触が落ちた。
「ッ、…ぁ」
ビクリと体が震える。その濡れたものが徐々に耳元へ這っていき、耳朶じだを緩く噛んでくる。
「ふァ…っぅ」
こそばいような不思議な感覚に身体の奥がツン、とした。
「響介…。俺、我慢出来そうに無いんだけど」
凱斗の熱っぽく低い声が耳をくすぐり、背筋にジンと痺れが走る。
「な、に…」
言葉の意味を理解しようと、必死で朦朧とした頭をフル稼働かどうさせる。
凱斗の手がTシャツの裾から忍び込んで来ると同時に、あ、と意味が解った。
「ちょっ…や、」
止めろ、と言う隙もなく、素肌を滑る指の感触に、ハッと息を飲む。
指は迷い無く上へ伸び、固く尖った部分にクッと爪を立てた。
「ぃ、んあぁっ」
ビクンッとオレの身体が戦慄わななく。キュッとそのまま摘ままれると、また、あられもなくオレの口から声が漏れた。
「ぅあんッ!やはっ、やだっ…」
背中をソロソロと凱斗の片方の手が這い、疼きを助長させる。
「あっ、あ…っぅ…ふぁっ、や、めっ…ぁ」
凱斗から与えられる快感に、ひっきりなしにオレは喘いだ。
額に凱斗からのキスが降りかかる。次に目蓋、頬、鼻、そしてまた唇に戻って来た。
「ん、んぅ…」
声を奪われ、余計に身体がビクつく。快楽に震えるオレの腹に、硬く熱いものが触れた。その正体に思い当たり、何故かジワッと腰に熱が灯る。
想像もしなかった自分の反応を恐ろしく感じた。
オレ、脳ミソ煮だってんのか?
焦ってその快楽から逃れようと無理矢理声を出す。
「ぁッ…か、凱斗っ!マジ、や、めろっ」
「止めろ?こっちは止めて欲しくなさ気だけど?」
凱斗はそう言うと、オレのズボンの中に手を突っ込み、グッと直にペニスを掴んだ。
「ひぁッ!あっああぁあぁぁァァっっっ!!」
いつの間にか限界まで硬くなっていたソレは、いきなりの強い刺激に一気に爆発した。
「えっ…響介っ?」
凱斗のビックリした声は遥か遠くに聞こえ、そのままオレは強烈な射精感の中で気を失った…。




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