《Act.6 とらわれて》


「ん…」

よく、『目覚めると見知らぬ場所だった』なんてあるけど、まさに今そんな状況だ。気が付いたらどでかいベッドに寝ていた。
ほんと、ここ何処だ?
そろりとベッドから降りると、Tシャツしか身に付けていないことに気が付く。ブカブカだから、下が丸出しになって無いのが救いだけど…、明らかに自分のじゃないよな。
『見覚えあるな…』
そう考えた瞬間、凱斗に握られただけでてイッてしまった事を思い出し、立ち眩みがした。

そうだった…。

って事は、ひょっとしてココは凱斗ん家?
あ"ー、どうしよ。
なんとか気付かれずに抜け出したい!窓から逃げようか…。
そう思い、窓に駆け寄る。
って見た感じ、明らかに10階以上あるんですけど。無理じゃん。ってか、下半身露出したまんまじゃ捕まんだろオレ!
ちょっとへこんでみる。ハァ…。

ガチャッ
「ッ!」

窓に寄りかかって項垂うなだれていたら、突然ドアが開いた。
そこから、もう二度と顔を見たくないって程の男が入って来た。
「あ、起きた?」
無言でコクコク頷くオレ。
もーマジ、穴があったら入りたい!ドア開いた時すっごい飛び上がっちまったし!
「喉渇いてるかと思って」
ヒョイ、と凱斗は水の入ったペットボトルを差し出す。
「…ありがと」
気まずくてベラベラ喋る余裕も無いから、取り敢えず水に口をつけてみると、自分が思ってたより体は渇いてたらしく、思いのほかゴクゴク飲んでしまった。
「…フゥ」
口を拭い、チラリと凱斗を見ると、ニヤニヤしてオレを見ていた。
「ッ!なん、なんだよッ」
その視線を意識した途端、ボワッと火がついた様に赤くなる。きっと首を通り越して肩まで赤いに違いない。
「いや、良い眺めだなぁ、と思って。Tシャツだけにしといて正解だったな」
「はぁ?」
やっぱコイツ頭緩いって、絶対。
「その見えそうで見えないっつーのがエロい」
開いた口が塞がらない。
「男のなんて見たって、どーしよーも無いだろ…」
と、言ってから思い出した。そう言えば凱斗はバイだっけ。
「そりゃまぁ、女のが良いよ。俺、基本ノンケだし。…でも響介は特別だ。見たいし、触りたい。ついでに言うとヤリたい」
「は、ァ?」
何言っちゃってんですか、この人。しかもジリジリ近付いて来てるんですけど!
「な、何…」
オレをジッと見つめながら詰め寄ってくる凱斗から逃れようと、自然と足が後退あとずさりを始める。
「あっ、あのっあのっあのっ、ぉ…」
意味不明な言葉を発しながら、後ろ向きに進み続けると、膝裏に柔らかいものが当たった。ん?と思った瞬間、凱斗に肩を押された。
「わっ」
ボスッとその柔らかい物の上に倒れる。
即座にベッドだと気付く。ってか、この部屋それしかねぇし!

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイッ!!

これは、このノリは、もう行き着く先はアレしかないだろっ?!タカの時と違って、この体格差じゃ絶対逃げれないっ。
パニックで固まっていたら、凱斗が自分の着ているシャツを脱ぎだした。
ヒィィィーーーッ!この人、ヤル気満々なんですけどっ!
「待って!待ってくれ!ストップ!!」
近づいてくる体を押し止めて、必死に訴えるオレ。
「ほんと無理なんだって!オレ、男と経験無いし、何より超ノンケだから!!」
凱斗に向かって突き出した腕をグッと掴まれる。
「細せぇ腕…」
凱斗は切な気にそう言うと、手に取ったオレの腕に唇を落とした。
「ッ!」
警戒心から、全身に力が入る。凱斗がゆっくりと覆い被さって来る。怯えるオレに、凱斗は静かに言った。
「お前に一目惚れしたんだ、あのライブん時に。こんな綺麗な人間、見たこと無いって思った…。今まで、こんなに誰かを好きになった事ねぇし、ましてやそれが男なんてあり得ないだろ。切なくて辛いよ。自分じゃどーしようもないんだ…。響介、お前が好きだ。」
「…っ…」
思いがけない告白に言葉が詰まる。コイツ、ヤりたいだけじゃ無いのか…?
な、何か言い返さなくちゃっ

「…オレ、オレ…あの………」

駄目だ。何も出て来ない。
言葉が見つからず、戸惑ってるオレに、凱斗はあの不思議な光をたたえた瞳で見つめてくる。
「なぁ、響介」
「はっ、はいッ」
「触れても良いか?」
「…ぇ」
オレにまたがったまま凱斗が頬に触れてきた。
そのまま両手で顔を包み込み、じっと見つめられる。
「…凱斗…」
「響介、ごめん」
何を突然謝ったかと思うと、いきなり激しく唇を吸われた。
「んぅっ!ん〜っっ!!」
Tシャツの中に凱斗の手が侵入してくる。キュ、と胸の敏感な所を摘まれて体が跳ねる。
「ああッぅっ!」
首筋をきつく吸われ、ツキリとする痛さに肩が震えた。
シャツをめくられ、胸間を舐め上げられると、サワザワとした感覚に鳥肌が立つ。
「ふァ、…は、ッ」
そのまま凱斗の舌は、さっきまで指でもてあそんでいた紅い突起に辿り着く。
「んあぁっ、や、ァッ」
舐められ、噛まれ、なぶられて、身体の力が抜けてしまう。
ずっとオレの肩を押さえつけていた手が、下半身へのびた。
「い、嫌だッ!やめ、っ」
下腹をソロリと撫でられ、オレのペニスがヒクリ、と反応する。それはほのかに硬くなり、新たな刺激を求めていた。
「ぁ…っ…」
自らその状態を目の当たりにして、それはまたヒクリと反応した。
「やっ…見るなっ」
必死で隠そうとするオレの手を、凱斗が邪魔をする。掴まれた手首が痛い。
凱斗に見られているという羞恥心だけで、更にオレのペニスは硬度を増した。
恥ずかしさに涙が頬を伝う。
「ぅ…っ…止めろよぉ…っ」
泣きながら訴えるオレに、凱斗は熱のこもった視線を返し、「響介…可愛い」とかすれた声で答えると、自分のベルトを解いた。
カチャリ、と冷たい金属音が部屋にこだまする。オレは自由な状態にも関わらず、凱斗の瞳に捕らえられて身動き出来ずにいた。
ドクンドクンと自分のこめかみが脈打つ音がいやに耳に響く。ソロソロと目線を凱斗の下腹部へ持っていくと、そこにはすでに猛った雄が息づいていた。ソレは想像を越えた質量で、同じものが自分にもあるなんて考えられない程だった。
「……ッ、…」
その凶器にも似たモノをこれからどう使うのか、考えただけで血の気が引き、オレのペニスはえた。
「痛くなんてしないから…優しくするから…」
そう言うと、またゆっくりと凱斗が被さってくる。オレは全身に冷たい汗をかき、僅かに震えながら怯えた目で凱斗を見つめていた。
「凱斗…っ無理だ、からっ…オレ、ほんとに…ッ」
弱々しく情けない声でやっと訴えた言葉は、柔らかい口づけに遮られた。
「っ…ぅ、ん…」
頭では抵抗しないと、と焦ってはいるけど、怖さに体がすくんでしまって動けない。
抗わないのを良いことに、凱斗の手がオレの内股に伸びる。
「は、ぁ…っ…ッ」
繰り返し、皮膚の薄い微妙な所を撫でられて、また身体の奥が切なくうずく。
ジンジンとペニスが脈動を始める。こんな状況でも反応を示してしまう、自分のに嫌気がさした。
情けなさと、再び息を吹き返した躯の悦びに、まなじりに涙が溜まる。
ス、とその雫を凱斗が唇ですくった。
再び凱斗の舌がオレの口腔を優しく蹂躙じゅうりんし始める。
唇の裏側を舐められ、ハ、と喘ぐと、凱斗のトロリと濡れた舌が入ってくる。それは逃げすがるオレの舌を絡めとり、クチュリクチュリと音を立ててうごめいた。
淫靡に混ざり合った唾液を飲ませようと凱斗がオレの顎を少し持ち上げ、咽の奥まで舌で犯し始める。
「ッ、ふ、…んっ…く…」
密かな抵抗も虚しく、その生暖かい蜜を嚥下する。飲み込みきれなかったものが端から流れ、頬へ伝うと、次第に冷たくなる感触にゾワリと首筋に鳥肌が立った。
なおも腔内をまさぐられ続けていると、不意にゆるく持ち上がったオレのペニスに快感が走る。
「あァ、っんっ」
凱斗がソコをユルユルと擦り上げ、先端のくぼみをカリ、と軽く引っ掻く。
「ハッ、あぁッ!っ…やぁッ」
焦らされていたものを刺激され、かなりの硬さを増したソコは、透明な蜜をにじませる。
オレの下肢で蠢く凱斗の手から、次第にチュクチュクと淫靡な音が漏れてきた。
「…ぁっ……んあッ…ッ…」
限界まで追い詰められると、凱斗の手がぬめる糸を引いて離れた。
ホッとすると同時に、最後までして欲しいという思いで揺れていると、今度は手よりももっと熱を持ったものが触れた。
何なのかを確認するまでもなく、ソレが凱斗の起立したペニスだと解った。
「ぁ…ッ」
大きさの違いがまざまざと感じられる。何をするんだろうと考えていたら、凱斗の手が、触れ合っている二人のモノを一緒に握り込み、動かし始めた。
「ひぁっ!あっあぁんっ」
手を動かすと同時に凱斗自身も動き、違う律動の波に飲まれる。
寸前で止められていたオレの欲望は、再び与えられる快感に激しくうち震えた。
「っああん…や、ぅっ、んっ…あっあぁ!は、んっ」
扱き上げられる度に、二人の混じり合った透明の精が、ヌチュヌチュと淫猥な音を立て、更に熱を加速させる。
「…ッ……ぁ…はっ…」
耳のすぐ側で、凱斗の押し殺した声が聞こえると、ザワザワと胸騒ぎがするような、不思議な興奮に火がともり、さっきよりも感じている自分がいた。
「は、んっ…、あっ、あぁっ!」
膨れ上がった二人のそこは、白濁した露を吐き始め、互いに限界を訴えていた。
「か、いとォ…ッ、も、ダメッ…、オレ、もぅっ…ッ」
「ッ響介、いい、ぜ…出せよ」
凱斗の手の動きが速く、強くなる。解放に向けて、オレの腰も自然と凱斗の刻むリズムに合わせ揺れ動き、更なる快感を生みだす。
「んああぁ、ぅ…っ!…ッ、凱斗っ…、ダメェッ、イァァッ…!!……ッ!…ッ」
「きょ、すけっ、イクッ!…ぁっ…、……ァ…ッ」
ビクン、ビクンと体を痙攣させ、オレ達は同時に熱い精を吐き出した。

凱斗が荒い息をつきながら二人分の白濁で濡れているオレの腹上へ手を伸ばし、そのドロリとした液体をすくう。グッタリして、ただボンヤリその行動を見ていると、凱斗はオレの膝を抱え込み、射精後で敏感になっている秘孔にそれを塗り込めた。
「ンァッ!やっ、何すッ…!!」
その行為に非難の声を上げようとしたら、ズルリ、と長い指が入って来た。
「ああぁっっ!」
オレの体内でヌルヌルと指が動く。
「あっ…やッ、ぃ…はぁっ、…ッ…ぁっ」
タカの時は異物感しか感じず、気持ち悪いだけだったのに、今は切ない快感を生み出している。
その不思議な官能に思考を奪われていると、凱斗がポツリと呟いた。
「やっぱ狭いな…」
そう言うと、グリグリと入口で指をグラインドさせ、本数を増やした。
「ん、ッく…、ぅあぁっ」
圧迫感が増し、かすかな痛みを感じたが、それよりもまだ響くような快感の方が勝っていた。指先が奥の方で蠢めき、同じような場所を繰り返し行き来している。
「この辺、か…?」
凱斗がそう言った途端、急激に射精感が高まり、オレは一気に昇天した。
「ひっっ!あッああぁあぁぁッッッ!!」
ドクリ、ドクリと、2回目とは思えない量が放出される。強すぎる快感にシーンとする頭の中で、自分の腸壁が凱斗の指を強く締め付けるのを感じた。
その波が去ると、また同じ場所を探られる。
「うぁあっ、…あっああっ!や、いやァっ!はあぁんっ、やぁあぁ…っ」
強くソコを擦られる度に、ビュクリ、と白い吐液が零れる。絶え間なく襲い来る悦びに漏れ出ててしまう喘ぎで、飲み込めなかった唾液が喉へと伝い落ちる。
自分の意思とは関係無く、無理やり射精をさせられているようで、与えられるだけの過度の快感に、切ないような苦しみを感じる。溢れ出る白濁の量が少なくなってくると、ツゥ、と凱斗の指がオレの中から出て行った。
「バック初めてだろ?スゲェな、トコロテンするなんて」
凱斗が感心したように言い、微笑む。
オレはイき過ぎて朦朧もうろうとし、涙とヨダレでグチャグチャだった。
凱斗はオレと目が合うと、表情から笑みを薄れさせ、欲望に濡れた瞳で見つめてくる。
その瞳が、あの時のタカとダブって見えて胸が詰まる。

「ぁ…、タカ…」

えっ、何言ってんだろオレ。

意識せずに呼んでいた。思いがけない自分の声にハッとする。
凱斗の顔がみるみる険しくなり、ギリリと腕を掴まれた。
「…何、それ…」
元が美形なだけに、睨まれるとめちゃくちゃ恐い。さっきまでの熱い汗は即座に引っ込み、冷や汗が背筋を流れる。
張り詰めた空気に、思考に架かっていたモヤが無くなる。
「や、ッあの…」
ゴクッと喉を鳴らし、体を強張らせる。
「タカって何、誰だよ」
「…ッ」
ヒヤリとするぐらい冷たい声に、言葉が詰まる。
捕まれている腕が痛い。
「い、痛い…って」
「誰だって聞いてんだよ!答えろよ」
いきなりの命令口調にムッとする。
なんでこんなヤツにタカの事を言わなきゃなんないんだ!何も知らないくせに!!
「痛てぇっつッてんだろ!離せよ!!」
無理矢理腕を振りほどく。
「ソイツと出来てんのかよ?」
「はっ?変な事言うなッ!違う!」
「じゃあ何?好きなわけ?ソイツのこと」
なにコイツ…、何でこんなに真剣なんだよ。
なんだか奇妙な焦りを感じ、声が荒くなる。
「ってか、お前には関係無いだろ!!」
「………」
凱斗の目が冷たく沈んでくる。氷のような表情でジッと見つめられると、まるで心臓まで凍ってしまいそうだ。
「な、何だよ…ッ」
ビビりながら何とか声を出す。
「出てけよ…」
「えっ…?」
「出ていけ!!!!」
「…ッ」
あまりにも大声で怒鳴られて耳がキーンとなる。
オレはすぐにふらつく足でベッドから降り、無言でいる凱斗を横目に寝室を出た。
ソロリとリビングを見渡すと、ソファに置かれてる自分の服を見つけた。一刻も早くこの家から脱出したくて、ジーパンだけ穿いて出口へ向かう。
玄関のドアを開けようした時、寝室の扉が開く音がした。慌て外へ出る。ドアが閉まる瞬間、向こう側で凱斗がオレを呼んだ声がした。

走ってエレベーターへ辿り着くと、何度も下降ボタンを押す。
「早くっ…早くっ」
焦るオレとは反対に、1Fからゆっくりとエレベーターが上ってくる。
バクバクと脈打つ心音をBGMに、追いかけてくるんじゃないかと不安で死にそうになりながら、光る階数表示を見つめていた。

だけど、オレの不安とは裏腹に、
エレベーターが到着しても凱斗は追って来なかった。

オレはエレベーターの中で
凱斗が追いかけて来なかった事を、
何故か

切なく思った。




■ Back       ■ Next       ■ Home       ■ Close