《Act.11 選択肢》


顔が近づいて来たと思ったら、緩く耳朶みみたぶをはむようにささやかれ、熱い吐息にゾクリとする。
「ッ…」
「駄目だろ、それじゃ。」
凱斗の唇から逃れようと顔を背けると、耳の後ろをねっとりと舐められた。
「っぁ…」
「そんなだったら、本当に犯されるぜ?」
低く掠れる凱斗の声に、耳の中まで犯されてる気分になる。その耳にヌルリと舌が入ってくる。
「ひっ!や、止め…」
ビクリと跳ねる腰を、引き寄せられ、脈打つ鼓動が分かるぐらいに密着する。早鐘を打つオレの心臓の音も聞こえてしまっているのだろうか。
ジリジリと体内でくすぶる何かが溢れ出しそうで怖い。
緊張で強張ったオレの体を、さっきとは違い、凱斗は穏やかに包み込むように抱き締めてきた。初めて凱斗とキスをした時のように、オレの反応を探りながら、優しい口づけをされる。チュ、チュ、とついばむようなバードキス。
「なぁ、あのタカって奴とどこまでヤったんだよ?」
しつこく問いかけてくる凱斗が、少し切なそうに見えるのは気のせいだろうか?
「ど、こ…までって…」
「キスの次は?乳首吸われた?」
「……ぅ」
いきなりそんな事を訊かれて言葉に詰まり、狼狽してしまった。
そんな事答えられるか!
「じゃ、チンポは?しゃぶられた?」
「っ!!」
直接的な表現に目眩がし、恥ずかしさにフリーズする。
「こっちは?」
凱斗はそう言うと、オレの腰に回していた手を下へ延ばし、ズボンの上から双丘の割れ目へ指をわせる。
「あんな感じるなんて、指で慣らされてたんだろ?」
「ッア…」
グイ、と強くすぼまりのある場所を押され、一度ソコに快感がある事を学んだ躰は、その悦びへの期待に、ツクンと突き上げるような甘い痺れをもたらした。
そんな自分の反応を否定するように、うつ向いて必死で首を振る。
「答えろよ」
「…答えたら…、帰らせてくれるのか?」
オレの問いに凱斗はしばらく考え、ニコリとする。
「答えて、キスさせてくれたら良いよ。濃厚なヤツね」
「っ、な、なんでそこまで…」
「だってずるいだろ。あの男とだけなんて。俺だって告白したじゃん」
「今したじゃないかっ」
「あんな軽いのじゃ、解放してあげられないね」
凱斗の手がオレの顎に添えられる。
「このまま無理矢理犯されんのと、ちゃんと答えてキスだけで帰してもらうのと、どっちが良い?」
微かに震える唇を指でソロリと撫でられ、選択を迫られる。
本当に帰してくれんのか?コイツ…。
疑わしいけれど、このままでいるとヤられるのは確実だ。

なら、選ぶのは…

「………胸も…し、下も、されたっ。そっ、それから…、ゆ、指も少し…」
目を合わせて答えられる筈もなく、俯いて喋る。凱斗の顔は見えないけど、きっとニヤついてるに違いない。
「その指でイッた?感じた?」
んなわけねーだろ!!メチャクチャ痛かったっつーの!
ブンブンと頭を振り、否定する。
「じゃあ、後ろでイッたのって俺が初めてなんだ?」
コクリと頷く。こんな質問に声なんて出せるわけがない。
頷いた後、微動だにしないオレの頭を、なでなでと子供の様に凱斗が撫でる。
頭の天辺にチュッとキスをされた。
「響介…顔上げて」
そっと頬に手を添えられて、優しく上を向かされる。羞恥心でぼやけた視界に入った凱斗の顔は、欲望を滲ませて切なく歪んでいた。
「良い?しても…?」
声に出す代わりに、そっと目をつむって肯定する。最初はさっきと同じ、軽いバードキス。唇を緩く噛まれ、チロリと舐められると、体の奥が熱くなってくる。
…やっぱり凱斗ってキス上手いな。
そんな事を考えてるうちに、凱斗の熱に煽られて激しく貪るようなキスになっていった。
口の端から混じり合った唾液がトロリと溢れる。その激しさにクチュクチュと、まるでセックスそのものの様に淫靡な水音が漏れる。狂おしい快感と不思議な興奮に、キスだけでイッてしまうんじゃないかと思った。
「ぅ…ん…っ…ンッ」
口腔を犯しながら、凱斗の手がシャツの中をまさぐる。肌をなぞられる感覚に、皮膚の内側がゾワゾワと騒ぎ始めた。
「あっ…や、っめ…」
オレの抗議の声は凱斗の唇にとらわれて行く。
ガチャガチャと乱暴にベルトが外され、そのままズボンごと下着も剥ぎ取られた。
「っ!うっ、嘘つきッ!キスだけって言ったッ!!」
必死の訴えに凱斗はニヤリとして言う。
「あぁ、キスだけだ。体中にしてやるよ」
「!!」
思わず絶句する。
コ、コイツ…。
あまりにもな言葉に固まっていると、突然お姫様ダッコで抱き上げられた。
「なっ…」
目を見開き、ビックリしていると、凱斗にまじまじと見詰められる。
「響介軽すぎ。ちゃんと食ってんのか?」
「余計なお世話だ!!降ろせよっ!」
何とか降りようとバタバタ暴れて言うオレを、凱斗は気にも留めずにスタスタと歩き出す。
ほんっと嫌味や野郎だなっ。
「ま、とりあえずはシャワーだな」
そう言って、悪魔は天使の微笑みを浮かべた。




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